タナトスの子供たち―過剰適応の生態学
Thursday, September 8, 2005
[yaoi]
「タナトスの子供たち―過剰適応の生態学」を読みました。読むのに異常に時間がかかりました。図書館の貸出期限ぎりぎりだったので、まる一ヶ月かかったということになります。書店で偶然文庫版のあらすじを読んで、こんなことをまじめに研究している方がいるんだと衝撃を受けて読むことを思いたったですが、なんのことはない著者の中島梓さんは栗本薫さんの別名義なのでした。
男どうしの恋愛・SEX関係を主なテーマとしたマンガや小説=「やおい」。少女たちはなぜ、そんなものに惹かれるのか。その奥にあるのは"優しいディスコミュニケーション"と「人間はなぜ滅びてはいけないのか」という、根源的な問いかけである。
(爆)や(笑)がこれだけ頻出する書籍を初めて読みました。もともとがウェブサイトに掲載されたもののようなので仕方ないのかもしれませんが、商業作家なのだから紙媒体におとすのならもう少し手直ししてほしかったです。
論説としておもしろい箇所もありました。特に、「本が好きというのは偉いことではなくて物語世界に依存しているだけ」というファンタジー依存症の主張はなるほどと思いました。ただ、著者の自画自賛ぶりと客観性のなさには少なからず辟易させられました。「やおい作家の方が少女漫画家よりも既婚率が高い」というのもおそらく統計をとったわけでなくて自分の周囲の状況で判断しただけでしょうし、そもそも社会学や心理学にまで言及しているのに参考文献がほとんど提示されていないのは大問題。
また、初出が98年ということもあるのかもしれないですが、やおいを「虐げられた少女たちがつくりあげた世界」と分析するには現在ではジャンル及び関連ビジネスが大きくなりすぎた感があります。社会的弱者である少女たちのつくりあげた世界でさえも、男性主体である商業主義に踊らされているという見方をすれば、それはそれでおもしろいのかもしれませんが。でもそれだと、増えているらしい男性読者の説明にはならないか。
エンタテイメントを考える上である種欠かせない要素となったやおいについて考える上で、「こういう意見もある」とたたき台にするにはちょうどいいかもしれないです。でも、もし今後私がやおいに目覚めることがあったとしても、栗本薫さんの著作を手に取ることはないだろうというのが正直な感想です。