Wednesday, February 1, 2006
[movie]
「THE有頂天ホテル」を観ました。三谷幸喜さんと彼好みの役者さんたちによる、彼らしい映画でした。同時進行する複数の物語が絡み合い収束していく群像劇で、一つ一つのドラマは地味なので盛り上がりに欠けるといえば欠けるのですが、いい具合に肩の力の抜けていました。映画館のあちこちから笑い声がこぼれていました。
キャストの豪華さは言うまでもなく、美術の仕事ぶりがとにかく素晴らしかったです。旧館のロビーから新館通路、4つのスイートルームの内装に至るまで緻密に緻密に作りこまれていて、美術フェチにはたまらなかった~。ホテルの裏側を知る身としては、そのあたりの描写もおもしろかったです。従業員通路は、(ホテルの規模にもよりますが)慣れていないと本当に迷子になります。
舞台には馴染みがないので舞台っぽさというのは本当にはよくわからないのですが、ワンシーン・ワンカットという手法は画面に緊張感があって、テレビでは表現できない手法だと感じました。映画の中には、予算の折り合いがつくのであれば連続テレビドラマにした方が合っているのにと感じさせるものも多いのですが、これはCMなどの外部要因でテンションを切られたら、きっと台無しになってしまう。迫力が違うからではなくて、外部から隔離してくれるからという理由で映画館で観るのに適した映画でした。
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Friday, February 3, 2006
[books&magazine]
小川一水さんの「ファイナルシーカー レスキューウィングス」を読みました。自衛隊の航空救難隊を舞台とした職業ドラマで、幼い頃に自衛隊員に救助された経験から救難隊員になった青年を主人公にすえたお話です。テーマは、人が人を救うということの矛盾。
あとがきを読めばわかるのだけれど、物語の舞台となる航空自衛隊の小松救難隊をきちんと取材した上で書かれています。だから、救難作業の様子は地に足がついた描写で安心して読むことができるのですが、反面、登場人物たちを肉付けて掘り下げるはずの業務以外の日常描写が浅くなってしまっていて、どうにも上すべりな印象をうけてしまいました。
自衛隊という政治的に非常にデリケートな組織を扱うのは、とても難しいことだと思います。正義の味方としてでも悪の親玉としてでもなく、あくまで自衛隊員の通常業務を描くというのだからなおさら。それゆえ物語を誇張させることができず、それは過剰に過剰を重ねるライトノベルというフォーマットは相容れないように感じられてしまいました。
とはいえ、自衛隊を組織としてではなく人の集団としてとらえてほしいという作者を含めた制作陣の想いは充分に伝わってきました。自分の命を危険にさらして人を助ける彼らは、自衛隊という組織に所属するがゆえになかなか正当な評価をしてもらうことができない。読み終わったあとに、いわゆる自衛隊もののフィクション(その多くは戦闘集団として自衛隊に焦点をあてているという現実)は彼らにどう映るのだろうという疑問がふと浮かびました。
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Wednesday, February 8, 2006
[movie]
ホテル・ルワンダを観ました。
何か感想を書こうと思っていたのですが、何を考えてもしっくりきません。感想を考える上でぶちあたるのが、ある現象を一般化して単純化させることに意味があるのかという疑問です。
印象に残っているのは、いつ殺されるかわからないという極限状態の中でのほんの僅かな安らぎの時間に、人々が笑い、歌い、踊っていたことです。
あとは、劇中のジャーナリストの「世界の人々はあの映像を見て―"怖いね"と言うだけでディナーを続ける。」という台詞。確かにそのとおりです。でも、何が起きているのか知るという、何も知らないことからの脱却は、それだけでとても大きな一歩なのだとも思います。
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Friday, February 10, 2006
[books&magazine]
宮崎あおいさんの「祈り」というフォトエッセイを読みました。
私は、宮崎あおいさんが写っている写真にはそれほど興味はないけれど、彼女の写した写真が好きです。技術的に巧いかどうかはわからないけれど、好きです。ぶれている写真やピントのずれた写真もあるし、ある程度の補正もかかっているのだろうけれど、写っている人たちの素敵な表情はホンモノなのだと感じます。はにかんだ顔、ちょっと格好つけた顔、満面の笑み。
この本で、シャングリラは「香格里拉」と書くのだと知りました。チベット語で「心の中の日月」を意味するのだそうです。
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Monday, February 13, 2006
[books&magazine]
古川日出男さんの「ベルカ、吠えないのか?」を読みました。アクの強い話運びと、洗練されていなくて、無骨で、ストレートで、力強く、ピンと張った緊張感のある文章。非常に男性的な観点で、20世紀という戦争の世紀を切りとったお話でした。
主人公は犬。一匹の犬ではなく、4匹の軍用犬からはじまる犬の血統が主人公。あるものは純血を保ち、あるものは雑種化し、人や時代やイデオロギーに翻弄される犬たちは、国籍をかえ、麻薬探知犬となり、人肉を喰らう。虐げられながら、血統を紡いでいく。
最後のページか、カバー裏あたりに、犬たちの系譜図があったらよかったのに。読み終わったあとにそれを見つけたなら、きっとそれだけで目頭が熱くなっただろうと思います。
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Saturday, February 18, 2006
[books&magazine]
伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」を読みました。交互に展開する、現在の物語と、二年前の物語。「もう戻ることのできない過去の幸せな日々」というのは、私が一番弱いテーマのうちのひとつです。
構成の仕掛けは途中で予想できてしまったのですが、それは意外性がないということでミステリとして弱いということなのかもしれないけれど、それも含めて著者の狙いなのではないかと思います。登場人物たちが自分は物語の中の存在だと認識している節があって、それが感情移入を妨げるのだけれど、二年前と現在との間の描かれていない空白の時間を、彼らがどう過ごしたのか、どんな激情がそこにはあったのかということを想像したときに、そのコントラストの鮮やかさに涙腺がゆるみそうになりました。
宗教が救いになっているというのもいいな。人を苦しめるのではなくて、苦しいときに寄り添ってくれるのが宗教の本来の役割ですよ、うん。
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Wednesday, February 22, 2006
[books&magazine]
漆原友紀さんの初期短篇集「フィラメント」を読みました。「岬でバスを降りたひと」「迷宮猫」以外は絶版になった単行本からの再録のようです。
死を意識した物語が多いです。再録分は、まだ荒削りというか、作画はとても不安定だし構成も拙いところが目立つのですが、その不安定さが、ちょっと不思議で少し哀しい雰囲気に合っているというか。
一番好きなのは「迷宮猫」。団地で迷った子どもを導く猫のお話。小さい頃親戚の家に遊びにいったときに、部屋番号を忘れてしまって泣きそうになったことを思い出しました。
「雪の冠」も好き。雪でできた冠だなんて、想像しただけでその美しさにドキドキします。
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Saturday, February 25, 2006
[books&magazine]
杉山隆男さんの「兵士を見よ」を読みました。自衛隊の中でも特に航空自衛隊に焦点をあてたルポタージュです。
とてもおもしろくて、寝る間を惜しんで読んでしまったけれど、これをおもしろいと感じることには危機感を抱かなくてはいけないかもしれないと思いました。少なくない数の自衛隊員が訓練中や災害派遣中に命を落としていることだったり、自衛隊が災害発生時にすぐには動くことができない理由だったり。感じたおもしろさが、知らないことを知るおもしろさだったから。
私は基本的には自衛隊、というか軍隊の存在には反対で、世界的に軍縮が進めばいいと願っています。だけれども、軍隊の存在と国防とは重なる部分はあるけれども別のものです。軍事力に反対するのであれば、それなくしてどうやって国を守るかということを考えるのが当然なのに、自衛隊という出自が後ろ暗くて曖昧な存在を忌避するあまり、多くの人が問題を棚上げしてしまっているように思います。平和を、何もしなくても得られるものだと勘違いしてしまうのが平和ボケということなのであれば、間違いなく平和ボケしています。
この本では、自衛隊を組織としてではなく、人の集団として扱っています。自衛隊員は自衛隊員である前に、誰かの子どもであり、もしかしたら親でもあり、家族を持っている一人の人である。そんな当たり前のことを踏まえて、その上で自衛隊の是非を問うことが、とてもとても大切なのだと思います。
心平さんの上官がウェディングドレスに包まれた千穂さんに向かって言ったのは、「どんなに喧嘩をしていても、朝は笑顔で送り出すように」という言葉だった。
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