ファイナルシーカー
Friday, February 3, 2006
[novel, 小川一水]
小川一水さんの「ファイナルシーカー レスキューウィングス」を読みました。自衛隊の航空救難隊を舞台とした職業ドラマで、幼い頃に自衛隊員に救助された経験から救難隊員になった青年を主人公にすえたお話です。テーマは、人が人を救うということの矛盾。
あとがきを読めばわかるのだけれど、物語の舞台となる航空自衛隊の小松救難隊をきちんと取材した上で書かれています。だから、救難作業の様子は地に足がついた描写で安心して読むことができるのですが、反面、登場人物たちを肉付けて掘り下げるはずの業務以外の日常描写が浅くなってしまっていて、どうにも上すべりな印象をうけてしまいました。
自衛隊という政治的に非常にデリケートな組織を扱うのは、とても難しいことだと思います。正義の味方としてでも悪の親玉としてでもなく、あくまで自衛隊員の通常業務を描くというのだからなおさら。それゆえ物語を誇張させることができず、それは過剰に過剰を重ねるライトノベルというフォーマットは相容れないように感じられてしまいました。
とはいえ、自衛隊を組織としてではなく人の集団としてとらえてほしいという作者を含めた制作陣の想いは充分に伝わってきました。自分の命を危険にさらして人を助ける彼らは、自衛隊という組織に所属するがゆえになかなか正当な評価をしてもらうことができない。読み終わったあとに、いわゆる自衛隊もののフィクション(その多くは戦闘集団として自衛隊に焦点をあてているという現実)は彼らにどう映るのだろうという疑問がふと浮かびました。